目を閉じて






わたしはアトリエのなかでも生紙に描けるようになった

ついこの間までは、実際の風景を

月の光や霧のなかの太陽を

目の当たりにしなければ描けなかった(生紙には)

いまはスケッチと心の中の風景をもとに描くことができる

その変化の過程は昨秋の熊本でのスケッチにある




昨年の秋に

熊本で、朝夕スケッチをしていた

蒲生の池にはもう水が少ない

農業用の溜め池なので、秋には日に日に枯れていく

水はなくなっていくので、途中からは

水なき水を描いた




そうすると、風景がみえてきた

そこは、水をこんこんとたたえた岸辺

水のなかの太陽

水に映る月

水のなかの光

霧のなかの光





そうすると、心の中に風景があるのを知った




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migiwa tanaka