本張りの仕方 一例として











裏打ちに続き
本張りの覚え書きです。


普通の水張りですが、
ここでは生紙に描いた絵を裏打ちした小品を
パネルに張り込みます。


(礬水引きの紙や大作、
厚手の紙には適さない方法です)






裏打ちに使ったものと同じように
普通にホームセンターで販売しているような
安価な障子紙を下敷きに使います。


裏打ち紙よりも四方五ミリくらい大きめに
寸法を取りカットしたものです。


霧吹きでまんべんなく湿らせます。







空刷毛で中心からシワを取っていきます。










余分な水分を綺麗な布巾に吸わせます。










裏打ちした絵を
表を下にして下敷き紙の上に置きます。










まんべんなく霧吹きをします。


裏打ち紙と本神と二重になっているので
下まですべてを湿らすように。


ゆっくりと、水を余計に使いすぎず
下までしっかりと浸透させます。


紙を湿らす時は、どんな時でも
ゆっくりと時間をかけて少しづつ紙を伸ばして行くのが
良いと感じます。










全体に水分が染み渡りました。









余分な水分を綺麗な布巾で吸い取ります。

優しく。






吸い取りました。







こちらは本張り用に用意したパネル。


木製パネルに、下張りとして
まずは韓国楮か土佐白土仲(楮紙)を張り、
その上に八女楮を張っています。
その上にさらに悠久紙を張る場合もあります。


言うまでもなく、パネルのアクが絵に伝わるのを
防ぐためです。


パネルはアクの少ないシナ(ラワンではなく)が望ましい。
ラワンの場合は、下貼りの紙と紙の間に
一度、花胡粉を塗ります。


胡粉は、アルカリ性なので
やはりパネルのアク(酸性)が絵に伝わるのを
防ぐためです。


ですので、出来上がりは下から


パネル→土佐白土仲(一面に糊を着けて貼る)→八女楮(袋張り)
→悠久紙(袋張り)→悠久紙(裏打ち紙)+石州楮(本紙)袋張り


と、四重〜五重構造となります。


また、パネルが大きい大作の場合は
下張りの紙は新鳥の子紙を使います。








前もって、パネルの四辺に、
下から三分の一ほどの領域に
糊を引きます。


糊は生麩糊を薄めに溶いたものです。


生麩糊は粉から多めに作っておきます。
チルドに保管して置き
時々温め直せば
しばらくは使えます。








先ほどの、表を下側にして湿らせてある絵の上に
表面を下にして、そっとパネルを置きます。









パネルは絵の寸法に合わせて作ってあるので
絵としっかり角を合わせます。









絵の二辺、紙を持ち上げて
ぴったりとパネルにつけます。

ぴったりと貼り付けた二辺を持ち・・









持ち上げて、くるっと表に返します。










私の取っている方法では、二辺(寸法が短い方)の

耳を先に折り込んでしまい、









もう二辺(寸法が長い方の辺)を降ろします。


この作業全て、若干、紙を全体に四方に引っ張りつつ
行います。


この力加減はやれば慣れて行くと思いますが
紙が破れないように引っ張りすぎず
でも優しく子気味よく引っ張ります。


手漉きで丁寧に作られた楮紙は強靭で
紙と仲良く扱えば、
どんなに薄手でも、まず破れることはありません。
厚手の画用紙の方がよっぽどもろいくらいです。


この力加減は慣れだと思います。










四辺を降ろしてパネルに張り込んだら、
少し絵が浮いているところがあれば
優しくヘラでなじませます。



使用している石州半紙は、
機械で裁断しているのではなく
職人さんが手で紙を切る用のナイフで
カットされています。


木製パネルも大工さんの手で作られたものであり
二つの四角形は四方がお互いに
ピタッと合わない場合もあります。
ほんの、若干ですが、ひし形であったり。


ですので、どうしても合わない部分はヘラで優しく
端を折り、パネルに馴染ませていきます。








出来上がりです。








カラッとした日よりも
なるべく湿度のある日に
ゆっくりと乾かすのが好ましいと感じます。



手漉きの紙はあたたかい。
それにとっても強い。
天日干しの木目の跡も素敵。
紙を買うと、時には包んでくれたりする塵入り紙。
みているだけで
心地よいリズムを刻んでいると思いませんか?


紙を扱うのは、紙によって個性があり、
扱っていけば、そのうち仲良くなっていきます。




わたしはたくさん描く方で、
毎日数枚描き、週末にはスケッチにいき、
また描き、たくさんの枚数になります。


そこから一部選んで裏打ちをします。
またそこから一部選び、本張りをします。
そこから一部選び額に入れて
しばらく寝かせたり、ながめてみます。


しばらく時間が経過して、張り替えたりもします。


わたしには時間が経ってみた方が
わかることがあります


ですので臨機応変に自由に作業ができるよう、
糊は薄い方がいいと思います。
薄くても、薄手の楮紙ならばしっかりとつきます。


作業というのは絵を描くことにくらべて
後回しになりがちですが、
皮切りさえすれば流れにのせてやっていくことができます


裏打ちなど、難しそうでも
「やってみたい」という気持ちだけあれば
手作業は、なんでもできます。
やってみると、「思い出す」という感覚もあります。


色々やってみることは、とても楽しいことですし
難しいことはまったく何ひとつありません。


図書館の本などを参考にして
既成概念にもとらわれず
自分なりにやりやすい方法を考案してみるのも一つです。




宗教的な言い回しのようですが (宗教ではないですが)
真の導きは常に自分のなかにあります


自分をよく信頼し、尊重し、
自分の感覚とよく対話しながら、
いろいろなことを探究して、
文字通り、神との対話を
楽しんだらいいと思います。





















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migiwa tanaka