うみのいろを拾う スケッチ

うみのいろを拾う スケッチ





























顔彩スケッチ

うみのいろを拾う

弓ヶ浜 南伊豆町



ゴールデンウィークは家にいようと思っていたのだけれど、ちょっとくらいは海を見に行こうと思って一日分の準備だけして出掛けて、結局そのまま四日間、伊豆半島をふらふら車中泊をして帰ってきた。


道中身体がだるくて、日中は小さな港に車を止めて窓を開け放ち、淡いラベンダー色のストールをカーテンがわりにかけて横になっていた。


港風がとても気持ちが良かった。良い季節だと思った。それでも、爽やかに晴れ渡り、みんなが元気そうにしていると、自分の心と身体の追いつかなさを感じて、ちょっと悲しくなった。


・・・


沼津の漁港に行ったときには胃腸の調子が良かったので、初めて生の桜エビを食べた。マグロと甘い採れたての桜エビ、しじみのお味噌汁。どれも鉄分が豊富で◎。


呼び込みの奥さんは弾丸トークで、自分の子供の事、離婚したこと、人間ドックの結果、ほんの数分間で人生のあらゆることを話した。


私は旅中もこういう人につかまりやすい。

うんうんと聞くから、相手も「あなた話しやすいわぁ」といくらでも話してくる。妙齢の女の人はいつでも自分の家族の悩みで頭がいっぱいだ。最近は体力がないので、かわすようにしているが、もう二度と会わないしまぁいいやと思って聞いていた。


「わたし元気そうに見えるけど、実はサロンパスだらけ、それに貧血気味なの」

「マグロを山盛り食べたら良いじゃないですか」

「それが食べられないのよ〜今もポケットにチョコレートが入っているし」


わかるなぁ。

鉄分やタンパク質が体内に足りないと、摂取するのも難しくなってくるんだよね。


「わたし、娘に頼ってるの」


奥さん、娘さんとがんばって。チョコレートは一気に元気になるけど、その後落ちるから、それだけじゃダメ。ちゃんと栄養もとってね。ちょっと優しい気持ちになれた。これが旅の一期一会の良いところなのかもしれない。


・・・


月の光を浴びたときには、何も考えなかった。七色の色を含む月の光をうっとりと眺め、月の唄も聞いた。


波音を聞きながら眠りにつくのは心地が良かった。海は一定のリズムで繰り返し闇を寄せる。その音が山にこだまし、静かに響き渡っていた。